ジュラシック・ワールドで4DXを初体験する

筆者はかねてより楽しみにしていたジュラシック・ワールドを気にもしていなかった4DXでみることにした。

4DXとは、体感型(4D)を演出するために座席が作品中のシーンとリンクし、前後上下左右へ稼働。 また、風、水(ミスト)、香り、煙りなど体感できるアトラクション効果を搭載した最新劇場上映システムである。

という感じであるので映画を鑑賞する、といった風情からはいささか逸れると思われた。 しかし花火的映画である事が予想されるジュラシック・ワールドであるならば体験しておくのも一興である。 というわけで3D眼鏡付き大人3200円と割高な料金を支払い4DX初体験の運びとなった。

筆者にしてみればゼロ・グラビティ以来の映画館での映画鑑賞であった。 なんたらポップコーンの甘い誘惑を退けスクリーンへ。 筆者は映画鑑賞中は飲食をしない主義である。 奥歯に挟まったポップコーンが気になり話が入ってこない、などと言う事があってはいけない。 しかも今回はただでさえ気もそぞろになる事請け合いの4DXである。

シートは通常のものよりやや大きくゆったり座ることが出来、右手には水しぶき機能のON・OFFスイッチがある。 https://www.youtube.com/watch?v=F-B5LuBfTPU 上映前に4DXの説明的映像が流れ、はじめて椅子の揺れや風、水しぶきがどのようなものかを体験する。 この説明的映像はなかなかよくできており、今はまだ4DX初体験のお客が多い劇場内に一体感が生まれる。

ジュラシックワールド開演

以下、多少のネタバレというかやや突っ込んだ感想を記述するため、ジュラシック・ワールドを未見の諸賢は念仏を唱え、無心となって読んで頂きたい。 途中退席は認められない。

映画が始まると久しぶりの3D映像に眼福を覚えるが割とすぐに慣れてしまう。 コレは以前から思っていて3D映像は意外と鮮度を保てない。 しかしかつての恐竜達がリアルな映像で蘇る、しかも飛び出してくる、と言うのであれば期待しないわけにはいかない。 そして内容であるが結論から言えばパニック映画として予想外の事は何も起きない。 シリーズ1作目のジュラシックパークは人類の夢として現代に恐竜をよみがえらせることがテーマの一つとなっており、ハモンドやグラント博士の視点を介して見ている側の感傷を誘う演出があったが、今作では恐竜はもはやありふれたもので商売道具である、という設定が成されている。 これはもはやジュラシックパークやその他のシリーズ映画を暗喩しているとも取れる。

登場人物達の心の動きはあちらヘ行ったりこちらへ行ったりと落ち着かず突拍子もない。 その他にも細かい突っ込みどころは多いが、そんな細かい事を気にしたら負けだ、と言うような雰囲気が作品そのものにある。 今回は吹き替え版で鑑賞。 もしかしたら4DX作品で字幕は無いのかもしれなかった。 洋画は字幕で見る派の筆者は久方ぶりの吹き替え版の鑑賞となったが、なぜ字幕を選んでいたのか再確認した。 多くは語るまい。

それでもジュラシックパークを映画館でみた世代には当時の衝撃が呼び起こされる内容となっているし、テーマ曲が流れる事によって込み上げてくるものは他に類を見ない。 最近ではすっかり単独行動をはじめた筆者の涙腺は3回程決壊しかけた。 「何処にそんなところがあったのだ。」と言われそうだが筆者は元来、お涙頂戴のシーンでは大して泣けないが、作り手の意図や情熱、ほとばしる男汁をスクリーン越しに察知した瞬間に落涙し乙女達に引かれている。 3回も涙腺決壊があったのでジュラシックワールドは筆者としては良い映画であった。

4DXの是非

そして4DXはというとまだまだ発展途上の感も否めなく、今後、評判次第では無くなっていくのではないかという気さえした。 4DXで鑑賞して良かったという点が無かったのである。

まず客席が動く事について。 概ねカメラの動きに伴っての上下動と何かの衝突の際の衝撃などであるが、映像とのシンクロ率が高くない。 そしてシーン問わず衝撃が伝わってくるのは背中のみであり、雑なマッサージチェアの荒っぽいマッサージが行われているようである。

それから風や水しぶきが吹き付けられてくる際の「プシュ」と言う音が案外大きいため気になる。 ジュラシックワールドでは風の吹き付けが連続して行われるシーンがあり、映画の音響がないがしろにされている印象も受けた。 水しぶきは今回あえてON状態で臨んだが、3D眼鏡に水しぶきがかかるとスクリーンが見えなくなるので邪魔なだけであった。

煙はスクリーン脇からシューっとマジシャンでも登場しそうな感じで吹き出されるので、劇場内で喫煙されている程度にイラっとする。

匂いもあるとの事であったがこれはよくわからなかった。 「使うならここだろう!」というシーンでさえ何も臭わなかった。 ジュラシック・ワールドには食事も含め良い匂いがしそうなシーンが無かった為かもしれない。(恐竜の食事シーンはある)

そしてこれ等の4DXの演出が一体誰目線なのか、ということをついつい考えてしまうのが結構集中を乱される。 人ががぶっとやられても背中にごりっと衝撃が来るし、恐竜ががぶっとやられてもやっぱり背中にぐりっと衝撃が来る。 ジュラシック・ワールドでは、映し出されている人間、恐竜、そしてカメラ(鑑賞者)の3つの視点が存在し、その視点の切り替えが4DX演出によって「今はこの人、今はこの恐竜、お次はカメラなのです。」とめまぐるしく変化するのでやはり映画に集中していたとは言いにくい状況を生み出していたと思うものである。   なにやらこのお仕着せのアトラクションには覚えがあるなと思ったら、プレイステーションのコントローラーにDUALSHOCKバイブレーション機能)がついた時の事であった。 いささかピントがずれているあたりそっくりである。 人の五感が動員されればされるほど感じ方の幅が広がっていってしまうことを意識して、いかに的を絞っていくかが課題であるように思う。   これから4DXで鑑賞するための映画なども作られていくのであろう。 果たしてそれは映画と呼べるのか。 新たな議論が生まれるのを楽しみにするものである。

かくしてまた新たに持ち物が追加されたのであった。 スクリーンショット 2015-09-05 18.24.27