残穢 住んではいけない部屋 をみる

毎月1日、映画館はファーストデイでお得に映画を見ることができる。 というわけで「残穢(ざんえ)住んではいけない部屋」を鑑賞したので感想を述べたい。 以下、ネタバレとやや突っ込んだ感想を記述するため、「残穢(ざんえ)住んではいけない部屋」を未見の諸賢は念仏を唱え、無心となって読んで頂きたい。 途中退席は認められない。   ジュラシックワールド鑑賞以来、映画館を訪れていない筆者は映画館欠乏症※1を患い何も手につかなくなったので大人しく映画を処方した。 決め手になったのはこの予告編である。 https://www.youtube.com/watch?v=1QuGfTG4zcM  原作は「屍鬼」「十二国記」の小野不由美氏による小説「残穢(ざんえ)」である。 残穢の意味は読んで字のごとく「残された穢れ」であり、穢れとは死・出産・月経などの際に生じるとされる不浄で忌まわしきものである。 残穢は造語だと思われる。 ちなみに原作は未読である。   映画「残穢〜」は主演の竹内結子氏が美しすぎて桃色ビジョンにトリップしそうになるのを必死でこらえながら鑑賞した。 竹内氏といえばストロベリーナイトの刑事役などで気の強い役柄を演じることも多いが、筆者としてはどこかおっとりとした役柄、まさに今作における「私」のような役柄がぴったりであると思うし、ありがたい限りであります。   さて、この「残穢〜」結論から言うとホラー映画としては「もう一声欲しい」感じの映画であった。 あらすじは転載した予告編が語ってくれているので省略。 小説版残穢wikipediaにはあらすじというよりダイジェスト版といってよい内容が記されているのでせっかちな諸兄はそちらを見られよ。   主に怪奇現象の根源を突き止める聞き込み調査に尺が割かれているため、ホラー映画というよりミステリーに近い。 たいていの登場人物に冷静ながらも心霊現象を受け入れる素地があることが新鮮であった。 よくある「そんなバカな話があるかいなー(笑)」みたいなシーンは存在しないし、「ヨバレル」「ツイテクル」などオカルティックなワードを普通に口にする。   映画の構造は「リング」に似ているので比較するとわかりやすいかもしれん。 残穢もリング同様、好奇心から穢れ(呪い)に触れてしまい、その穢れ(呪い)が増殖するという特徴を持っている。 リングがビデオを見せることだったのに対して、残穢は「聞いても祟られる、話しても祟られる。」という何でもありっぷりである。 触るべからず(禁忌)ということであろう。 こういうものは歴史を重ねるにつれ過剰になっていくのは仕方がないのかもしれないがホラーはどんどん難しくなる。   リングにあって残穢に無かったものが3つ。 一つ目はタイムリミット。 リングは貞子氏制作の呪いのビデオを見ると七日目に死んじゃうというおっとろしいタイムリミットが設定されており物語に切迫感が生まれていたのだが、残穢にはそういったタイプの緊張感はなく、むしろ過去を遡ることが調査の主軸な上に登場人物の半数が心霊現象に対して、特に怯えていたりするわけでもないので新しい発見がある度にちょっと嬉しそうといった具合である。 まぁこのような登場人物たちの態度が伏線といえば伏線であった。   二つ目は目的。 リングでは自分だけならまだしも主人公の息子までもがビデオを見てしまい、これは何としてでも呪いの連鎖を食い止めなければ!という共感を呼ぶ目的が設定されたが、残穢にはこういった目的が無かった。 冒頭から好奇心に基づく調査調査で、主人公も淡々と物事にあたるのである意味ハードボイルド。   三つ目は解決、というかオチというか物語の主軸たる心霊現象を食い止めるための策が見出されなかったこと。 リングでは二人以上の人間にコピーしたビデオを見せると呪いが解けるという残酷な解決策を示し、貞子氏の怨念の深さと知能犯ぶりが発揮され、後味が悪くもホラー映画として素晴らしい着地を見せたが、残穢ではこういった解決策は見出されない。 おそらく一番物足りなく感じた点は映画終盤、心霊現象の外側にいたはずの主人公にとうとう魔の手が伸び、これから始まる最悪なシナリオが示されたところで映画が終わったことであろう。 ホラー映画は幽霊、悪魔、魑魅魍魎に打つ手なし!という終わり方をするのが大半なので定石といえば定石だったのか。 しかしストーリー全体がミステリー風であった為に何かがはっきりしないと気持ちが悪いのだよなぁ。   まぁそこらへんは好みの問題かもしれん。 この内容で十分肝を冷やし満足という視聴者もおられることだろう。 正直に言えば筆者は別に怖く無かった。(強がりでなく!) 冒頭から終盤まで何かモニョモニョとした幽霊の描写が頻出するのだがこれがイマイチ怖くない。 このモニョモニョをはじめ、同じ幽霊が何度も出てくるため終盤の衝撃シーンのパンチが弱い。 まぁ夜中に目を覚まして目の前にあんなのがいたら、いくらタフガイと名高い筆者でも卒倒するだろうが。   イメージで恐怖感を与えることは難しい。 それは誰もがそれぞれに一番怖いモノのイメージを持っているからであり、他人のイメージがそれを超えることはほとんどないからだ、と思う。 恐怖は想像力からやってくるのである。 だからきっとホラー小説やふいに耳にする怪談を超えるホラー映画を作ることは難しい。 その点で「ワケあり物件」を扱った残穢は優れた資質を備えている。 この日本ではたいていの人はどこかしらの部屋に暮らしている。 その部屋のわずかなシミや傷痕、物音。 そういった日常を異界へと変えてしまう布石としての物語であると思う。   公式ホームページを覗くと、それぞれのキャラクターに実在のモデルが存在することがわかり、これはもしや実話なのでは?という疑念も浮かぶが確かめる術はない。   映画としては賛否が分かれそうであるが、ホラー好きもミステリー好きも語れる映画ではないだろうかと思う。 まだまだ寒い季節、肝を冷やしたくて仕方がない、春からは一人暮らし、そんな諸兄にオススメの映画である。 ついでに、残穢と対を成す小説「鬼談百景」は現在Gyaoで映像化され配信中である。 残穢を劇場で見るかどうか悩んでいる、あるいはおっとり竹内氏のナレーションが聞きたいという諸兄はこちらを視聴するのがよかろう。   ※1 映画館欠乏症 映画館を一定期間訪れていないと発症する病。ひたすら新作映画予告とホームページを閲覧しては「オモシロソウダナ、オモシロソウダナ。」とつぶやく症状に見舞われる。映画館で売られるポップコーンの匂いを嗅ぎ、劇場内で映画を鑑賞すれば治る。駄作だった場合ぶり返す。