古民家を購入して地方に移り住むまで 其の一

2016年春。 筆者は古民家を購入し日本のでっぱりへと移住した。ということはすでに書いた。 その理由や経緯を綴るには約1年前に遡らねばならない。

「長いの?」

と危惧する読者諸賢に弁解するならば、かいつまんで綴っていくよりも順を追って綴った方が分かりやすいのである。筆者が。 長いかどうかは神のみぞ知る。 広げた風呂敷の目算は当たった試しがない。 そういうわけで筆者がドイツから日本への帰国が迫った2015年春に遡るったら遡るのである。   まだまだ寒いベルリンのアパートの一室で筆者は帰国後のことを考えていた。 とりわけ何処へ行くのかということを。

一度海外に暮らしてしまえば日本国内であればどこでも同じ、というくらいに急激にキャパシティが拡張されてしまった筆者は、もう本気で日本地図に向かってダーツでも投げてやろうかと考えていた。 結果的には一度戻ることになった東京ももはやそれほど必然性が見出せず。 かといって住んでみたい憧れの街というのも筆者にはすでに無かった。

しかしそんなふわふわしたことも言っていられない程帰国が差し迫り、ぽちぽちと東京の賃貸情報などを眺めていると「家賃て高いな。」と当たり前のことを思う。

その時筆者が暮らしていたベルリンのアパートは決して贅沢な作りではないがキッチンもシャワールームもあるしリビングも10畳はあるかというような部屋であった。 建物もエントランス、エレベーターを備えた鉄筋で立地も東京で言うところの杉並区くらい場所である。 これで一ヶ月350ユーロである。 当時で¥52000くらい。現在で¥43000という驚きの円高ユーロ安状態はさておき、この賃料で同程度の部屋を東京23区内で借りることは不可能である。

わざわざ高いお金を払って壁の薄い狭い部屋に住むというのは大いに抵抗があった。

余談であるが、ミニマリスト諸兄が「ほーら」と何にもない自室を惜しげもなく晒し、それに対し「ウサギ小屋」「独居房」と揶揄する方々の意見に、筆者は「一理ある。」と思っている。

そんな時kindleで一冊の漫画に出会う。 である。 漫画家のつるけんたろう氏がタイトルどおり古民家を0円で譲り受け、東京から広島の尾道市に移住したルポ漫画である。 漫画の中では空き家を譲り受けるまでの経緯や空き家の修繕、現地での生活についてつる氏が悩んだり悩まなかったりしながら転げまわる様子が面白可笑しく描かれている。

※お試し版もあるよ。

これを読んだ筆者は「そんなこともあるのかぁ。棚からぼた餅が降ってくればいいですなぁ。」と他人事のように思っていたのだが、どうやらそうでもない。

今や空き家は日本全国に数多く存在し、その対策に地方自治体だけでなく国も動き始めている。 空き家対策特別措置法によって老朽化した建物の取り壊しが容易ではなくなった為、古くなった建物も持ち主はなんとか残しておきたい、という状況になっている。 家は住んでいなければどんどん廃れていってしまう。 特に日本の気候においては顕著である。 そうした借り手や買い手を求めている空き家が多く存在しているということは筆者のところにもぼた餅が降ってくるのではなかろうか?

帰国後、筆者はその足で尾道へと向かった。 以前の筆者であれば「広島・・・遠いわ。」と見送っていたであろう。 しかし飛行機で16時間も移動してしまえば成田から広島なんて近所である。 尾道 漫画で見たように空き家があるのかはわからないが、尾道市というところを見てみたいとも思っていたしお好み焼きも食べたいと思っていた。 尾道市の空き家バンクは行政とNPO法人尾道空き家再生プロジェクトが共同で運営しており現地で利用登録を行わないことには入居者を募集している物件の情報を閲覧することができない。 なのでとりあえず行くことにしたわけである。 尾道

尾道 尾道は大変魅力的な街であったが残念ながら筆者が訪れた時点では紹介される空き家物件は数えるほどしかなかったし、漫画のような棚ぼた物件も無かった。 すでに移住をし暮らし始めている方々も多く居られるし、空き家絶賛修復中の移住者の方もちらほら見ることができた。 NPOでは現地にしばらく滞在し空き家を探すことを推奨していたが帰国したばかりでなかなかそこまで踏み切ることができなかった為、この日は漫画に登場する「あなごのねどこ」に一泊し、翌朝尾道市を後にした。

この時点で筆者は本気で地方に棚ボタ空き家物件(0円物件)を見つけて移住することに決めダーツを握りしめたのであった。

つづく

尾道ニャンコレ 尾道猫

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尾道猫 尾道には猫が多い。 しかも人に慣れていて全然逃げない、むしろ寄ってくる。 猫好きにはいい街かもしれない。 思う存分もふもふするがよい。 尾道猫